
今回のブックレビューは、この本!
『バウルの歌を探しに』
〜バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録〜
この本は、以前紹介した『パリの国連で夢を食う。』と同じ作家さんの本になります。

インドの隣に位置しアジア最貧国とも言われるバングラデシュで、伝説の吟遊詩人「バウル」を探し求め、旅するノンフィクション紀行エッセーです。
『パリの国連で夢を食う。』の文体がすごく好きだったのと、わたしが途上国について知るのが好き、ということもあり、思わず購入。
そして、拝読。
単刀直入にいうと・・
心が震えた。
本を読み、心が震えたのは久しぶり。
正直、文章は『パリの国連で夢を食う。』より、少し読みづらいなぁ、という印象。
でも内容が新鮮だし、ノンフィクションエッセーというのもあり、序盤はスイスイ進んでいきます。
バングラデシュの雰囲気とか、人々の優しさが垣間見れて、途上国好きにはたまりません。
主要 登場人物が、またいい味出しています。
ただ、全第八章のうち、第四章〜第五章は若干マンネリ感を覚えます。
ずいぶんこの辺で、japotinaも読むペースが遅くなりました。
が。
第六章内の、筆者の中米コスタリカでの短期留学エピソードの想起で、グッと心がつかまれます。
あの時、どうして私はあんなケチな判断をしてしまったのだろう。やっぱりあの一瞬に、私という人間の小ささが出たのだと思う。
それからは、あんな美しい村に行ける仕事がしたいと思い続けてきた。またエリザベスみたいな人に会う時は彼らに迷惑をかけるのではなく、少しは役に立ちたい。
japotinaも20代前半に、メキシコ貧困地域の孤児院でのボランティアや、シングルマザーたちの家を建てるお手伝いをしたり、ベトナムの最貧地域で学校へ行けない子どもたち・孤児院・エイズ患者たちと触れ合った経験があるので、自身の経験が重なり、涙がこぼれます。
また、その後、著者の川内氏がコンサルタントとして、また国連職員としての仕事としての国際協力に対する葛藤が、鮮明に描かれています。
まるで違う意見を持った二人の人間が、自分の中で同居していた。
コンサルタントとしては、「貧困削減、便利な生活」を促進するために開発や教育を推進し、その一方のプライベートでは電気も学校もない孤島や砂漠、山の先住民の村に滞在する。
そして、ウイグル自治区の先住民が、「いつか高層マンションに住みたい」と言うのを聞いて、勝手に今の方がいいのにと落胆したりしていた。身勝手な話だ。そりゃ誰でも、二十四時間お湯が出て電気がつく生活を望む権利がある。自分だって、夏はクーラー、冬は暖房の家に住んでいる。それなのに、彼らには昔のままでいて欲しいと心のどこかで願っているのだ。
矛盾だらけである。
(改行はjapotinaによる)
200%共感。
同じく国際協力や開発について勉強してきた・仕事をしてきたjapotinaは心がわしづかみにされる。
そして、
第七章「知らない鳥の秘密」で、突然、衝撃が走る。
人間は、家や時代のしがらみの中で生きている。ヒンドゥーとか、日本人であるとか、女性であるとか。でも、私たちは自分次第で、その囲いから、ココロだけでも抜け出すことができるのかもしれない。いや、抜け出すようにもがくことは、できる。
(中略)
それは他人たちの思考の結果で生きることに他ならない。他人の雑音によって自分の内なる声が掻(か)き消されてしまわないように。そして、自分のココロや直感に従う勇気を持って。
ココロや直感は、自分が本当は何者であるのかすでに知っている。
これまでの紀行を一緒に追ったものとして、この箇所でガツーーーンときます。
このガツーーーンは、ぜひ本書を読んで、体験してほしい。
明日からの活力や、自分の人生に対する自信をもらえる、そんな良書です。
ということで、満を持して、
じゃん。
ぜひあなたもバウル探しの冒険に、旅立ってみてください。
バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録 (幻冬舎文庫)
★★★★★:絶対にリピート読み!
★★★★☆:読むべし!
★★★☆☆:時間あるならおすすめ
★★☆☆☆:モノ好きなら読めば?
★☆☆☆☆:読まないで!!