オラ!ペルー在住の japotina(@UnaJapotina)です。
前回の『インカ帝国のおへそ』に引き続き新たなペルー神話を訳しました🙌
今回は書き下ろしイラストとともに公開です💝
私と同じく旦那さんがペルー人というペルーラブな osito & kompiamor さんにイラストをご担当いただきました!
サムネイルも描き下ろし・・🥳
今回はペルーに実在するオアシス “Huacachina/ワカチナ” にまつわるペルー神話です。
このオアシスの起源となる悲しい恋の物語です。
それでは、はじまりはじまり〜👏
ワカチナの涙
原話:La Sirena de Huacachina
訳・編集:japotina
編集・校正:堀内佳美
イラスト:osito & kompiamor
これは、昔々、遠く離れた国、ペルーであったお話です。
ペルーには大きな大きな砂漠があります。
ここでは雨がまったくふりません。
右も左も見渡すかぎり砂・すな・スナ
これはそんな砂漠で暮らす人々のお話です。
ペルーの砂漠の中に、イカという町がありました。
イカには美しい女性がいました。
緑の瞳に漆黒の髪。
そして、澄みとおった高い声。
誰もがほれぼれとしてしまう美しい女性でした。
彼女の名前は、ワカチナです。
この日もいつものようにワカチナは、砂漠の中に生えている一本の木の木陰で涼んでいました。
家から少し離れていますが、ワカチナのお気に入りの場所だったのです。
そこを通りかかった一人の兵士がワカチナに気付きました。
名前は、アジャール・クリーニャ。
インカ帝国のために勇敢に戦う兵士です。
アジャールはワカチナをひと目見て、声をかけずにはいられませんでした。
はにかみながらも話すワカチナの声の、なんと美しいこと。
そして、ワカチナはユーモアも知性もかねそのえています。
アジャールはすっかりワカチナの虜になりました。
アジャールはワカチナに言いました。
「僕はこれから戦に行く。
必ず勝って戻ってくるから、その時は一緒に暮らしてほしい」
そんな勇ましいアジャールにワカチナの心もときめきました。
それからワカチナは、その木の下で、来る日も来る日もアジャールの帰りを待ち続けました。
2週間たった頃、いっそうたくましくなったアジャールがたくさんのお土産を持って帰ってきました。
「おかえりなさい!」
こうして、二人は一緒に暮らすようになりました。
アジャールのお土産はイカでは手に入らない珍しいフルーツや野菜でした。
それらを使って早速アジャールとワカチナはごちそうを作りました。
「まぁ、なんて美味しいの!」
幸福な時間が流れます。
さて、ある日のこと。
インカの王様から使いがやってきました。
再び隣国との戦が始まったと・・
アジャールは、またも出陣しなければなりません。
ワカチナは寂しく思いながらも、アジャールの無事を祈って帰りを待ちました。
勇敢なアジャールはインカのためにライオンのように戦いました。
ワカチナのことを思いながら全力で戦いました。
しかし、
敵の剣に倒れ、帰らぬ人となってしまったのです。
再びイカへ使いが出され、ワカチナにこのことが伝えられました。
ワカチナは衝撃のあまり、何も言わずに走り出しました。
走って、走って、アジャールと初めて出会った木の根元までやってくると、
ワカチナは、木にもたれかかり、堰を切ったように泣き始めました。
「大好きな人を亡くすなんて、なんと人生とは辛く苦しいの・・」
ワカチナの緑の瞳から、涙は後から後からあふれてきます。
ワカチナは、朝も昼も夜も大声で泣き続けました。
昨日も今日も明日もおいおい、おいおいと・・
泣いて泣いて、涙は緑色の水溜りになりました。
それでもワカチナの涙が枯れることはありません。
涙はとめどなく流れ続けました。
水たまりは日に日に大きくなり、ついには湖のようになりました。
砂漠の中にできた湖。
そう、オアシスとなったのです。
それからどのくらい時間が経ったでしょうか。
1週間・・1ヶ月、それとも1年でしょうか?
戦帰りの若い兵士が砂漠を歩いていました。
突然、オアシスを目にして立ち止まると、どこからか泣き声が聞こえてきます。
泣き声の主を見つけ、兵士は言葉を失いました。
なんと美しい女性!
兵士はもう少しよく顔が見たいと思い、そっと近づこうとしました。そのとき・・
コツン
身につけていた鎧に荷物が当たってしまいました。
泣いていたワカチナはハッとします。
「誰かいるの?」
あたりを見回すと、近くに若い兵士がいるではありませんか。
アジャールと同じようないでたちです。
でも、あのアジャールではありません。
「アジャールじゃない!
アジャールはもういないんだわ!」
ワカチナは突然現れた兵士のことが急に怖くなり、思わずオアシスの中に飛び込みました。
バシャン
「あっ・・!」
兵士も突然のことに驚きました。
でも、あの女性が水から出てきた時こそ顔がよく見られるに違いない!と思い、ワカチナが再び顔を出すのを待つことにしました。
1分でしょうか、10分でしょうか、1時間でしょうか。
待てど暮らせど女性は出てきません。
兵士は不思議に思いつつも、お腹も減ってきたので、家に帰ることにしました。
もうすっかり日が暮れています。
兵士がいなくなったことを確認したワカチナは、やっと水のなかから出ようと思いました。
それにしても、どうしてこんなに息が続くのか、自分でも不思議でした。
「あれ・・?」
ワカチナは、なぜだかうまく立ち上がれません。
「どうしてしまったの?」
ゆっくりと自分の足元を見てみると、
ワカチナはなんと人魚になっていたのです!
ワカチナは驚きました。
「でも、これで誰にも見つからずにこのオアシスの中で心いくまで泣けるわ。
おぉ、いとしのアジャールよ・・」
こうして、ワカチナは人魚となって自らの涙の中に暮らし、とうとう地上に戻ることはありませんでした。
これがイカ市の巨大オアシス「ワカチナ」に言い伝えられる人魚の伝説です。
今でも夜になると女性の泣き声が聞こえてくるんだとかこないとか・・
おしまい
©️ japotina
おしまい
いかがでしたでしょうか?満を持してお届けした『ワカチナの涙』😌
最後は人魚になってしまうワカチナ。
切ないラブストーリーです。
どうして、人魚っていつも悲しい物語なんだろ・・(独り言)
ちなみに、実際にこのワカチナのほとりには人魚の銅像があるんです!
それくらいペルーでは有名な神話なんです✨
ぜひワカチナへ訪れる際はこの人魚の銅像を探してみてくださいね😘
¡chao!
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ペルー神話を日本語で読めるなんて素敵です!自分のルーツである国の神話凄く興味があったので、楽しく読ませていただきました。妹や弟に夜寝る前読み聞かせしたいと思います。
Hinakoさん、素敵なコメントありがとうございます涙 そう言っていただけると頑張った甲斐がありました。ぜひ妹さん弟さんたちの様子も教えてくださいね。いつになるかわかりませんが、あと1〜2話訳せたらと思っています!